「嫌われる勇気」という本を知っていますか?
ベストセラーなので知っている人も多いと思いますが、アドラー心理学について非常に分かりやすく書かれた名書です。
今年の春頃に購入して読んだ本で、その時には、「おもしろい考え方ではあるけれども、現実的ではないかな。」と思っていました。
ですが、なにか引っかかるものがあって、何度か繰り返し読んでいくうちに、「今の時代にはこういう考え方のほうが合っているのかな」と思うようになってきました。
叱っても褒めてもいけない
タイトルにもあるように、これがアドラーの考え方のひとつです。
特に、褒めてはいけないことについて、文中の説明を抜粋すると、
つまり、「えらいわね」とか「よくできたわね」、「すごいじゃない」とほめる母親は、無意識のうちに上下関係をつくり、子どものことを自分よりも低く見ているのです。先ほどあなたのおっしゃた調教の話は、まさに「ほめること」の背後にある上下関係、縦の関係を象徴しています。人が他者をほめるとき、その目的は「自分よりも能力の劣る相手を操作すること」なのです。そこには感謝も尊敬も存在しません。
(中略)
アドラー心理学ではあらゆる「縦の関係」を否定し、すべての対人関係を「横の関係」にすることを提唱しています。ある意味ここは、アドラー心理学の根本原理だといえるでしょう。
すごいことを言っていますよ、これ。
褒めるだけで教育するというのはこれまでも何度も聞いたことがあるのですが、アドラーはそれすらダメだと言っているわけです。
僕が持っている教育に対する考え方を、根本から覆すような内容です。
承認欲求を否定する
更に驚くことに、アドラーは承認欲求まで否定しています。
たとえばあなたが職場でごみ拾いをしたとします。それでも、周囲の人々はまったく気づかない。あるいは、気づいたとしても誰からも感謝してもらえず、お礼の言葉ひとつかけてもらえない。さて、あなたはその後もごみ拾いを続けますか?
(中略)
適切な行動をとったら、ほめてもらえる。不適切な行動をとったら、罰せられる。アドラーは、こうした賞罰による教育を厳しく批判しました。賞罰教育の先に生まれるのは「ほめてくれる人がいなければ、適切な行動はしない。」「罰する人がいなければ、不適切な行動もとる。」という、誤ったライフスタイルです。ほめてもらいたいという目的が先にあって、ごみを拾う。そして誰からもほめてもらえなければ、憤慨するか、二度とこんなことはするまいと決心する。明らかにおかしな話でしょう。
これは正直、この内容そのまま心当たりがあります。
若い女性を部下に持った時の事なのですが、彼女はとてもまじめで一生懸命仕事をするタイプの方でした。
朝も少し早く出勤してきてゴミ拾いをする事などあり、よくやっているなぁと感心はしていたのですが、僕のほうから具体的に声をかけて褒めたことはなかったんですね。
その事を彼女はとても不満に思っていたようで、定期面談の時にそのことを指摘されました。
僕としては、通常業務に対してやっていることをきちんと見てあげねば、という思いでいたのですが、彼女は通常業務同様に、そういう細かいところも見てほしいと言うのです。
それはすまなかったと思い、それ以降は意識して声をかけるようにはしたのですが、これはまさに上記の内容そのままなんですよね。
仮に僕が、そんな細かな事までは見てられない、と言ってしまったら、彼女はもうゴミ拾いなんてしなくなったでしょう。
さらに言うと、「自分を管理してくれる誰か」を求める人は多いような気がします。
理想の上司、という言い方もできるかもしれません。
自分が悪さをした時はしっかり怒ってくれる、いいことをしたら褒めてくれる、やるべきことを忘れていたら教えてくれる、そういう便利な人を求めているんです。
僕が教育に対して、「今持っている考え方でいいのか」と思いはじめたのは、このあたりがスタートのように思えます。
そういう人たちの「自分を管理してくれる誰か」になろうとした場合、かなり規範的は振る舞いを常にし続ける必要があります。
そして、規範的な振る舞いができない部分があった場合、それを理由にして「やらない」という人がでてきたりもします。
これで本当にいいのだろうか?
そう感じ始めていたんです。
承認欲求というのは、確かに満たされれば大きな活力源となりますが、アドラーが言うような考え方も確かにその通りです。
このアドラー心理学にもとづいて、もう一度考え方を根本から見直してみる、ということもアリなのかなぁ、と思い始めているわけです。
あとがき

思ったことをとりあえず書いているので、あまりまとまりのある記事にはならなかったのですが、引き続き、もう少し頭を整理していきたいと思っています。
考え方を根本から変えるのは言うほど簡単ではないのですが、変えてみるのもいいかなと思える内容が書いてある本です。
続きはまたすぐに記事にします。